case 12ー 営業設計 / INTERIOR DESIGN GUIDE 2025
シンプルさと
丁寧さが持つ深み
高松市西植田町に、鉄骨の建物をリノベーションした高陽建設(sorai)の事務所兼ショールームがある。木材を加工する工場も併設し、木に精通した自社の大工が腕を振るう。
玄関は木材の扉をガラスが挟むような形で、どこか宙に浮いたような感覚に陥る。中に入ると落ち着いた色合いの壁が現れる。お城の塀などに使われる版築※をイメージした土が塗られ、ゆるやかな色の変化が壁に表情を持たせる。照明は全て電球色に統一され、温かみのある空間を演出。棚の下や天井に照明を隠し、間接照明にすることでさらに柔らかさを出し、自然の光も生かした明るさを作り出す。
「地域の風土、自然の光、窓を開けたときに感じる風など自然との調和を大切に考えている」と代表の西尾直樹さん。

この事務所は、家を建てるときの窓の収め方、壁の色、照明の置き方、素材感などを体感できる役割も持つ。カタログではわかりにくい部分をお客様がイメージしやすいのだ。
窓は壁の真ん中にではなく、角に寄せて配置。垂れ壁(天井から下がった壁)を作らず、広い開口をとる。コンパクトな打ち合わせスペースでありながら、圧迫感を感じさせず、開放的な雰囲気を生み出している。
「なんとなく居心地がいい。ずっと座っていたいと思えるような、時を忘れるような場所が正解だと思っている」。その空気をつくるために大切なのは、まず色や素材、テクスチャーを欲張りすぎないこと。少なすぎると思うくらいがちょうどいい。インテリアの配置も奇をてらわず、日々の暮らしの中で静かに息づくシンプルさを心がけたい。
自然素材を使い、経年変化とともに深まっていく場所に上質な空気が流れていく。色、素材、テクスチャーひとつひとつを丁寧に選ぶことで、流行を超えて、長く大切に暮らし続けられる場所が生まれていくのだろう。

キッズスペースには車のおもちゃが整然と並んでいる。子供たちを夢中にさせるアイテム

自然豊かな場所にある事務所。黄色い蝶々も飛んでいた。左右の四角い箱状の部分が増築した部分である
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POINT! >>> 空間を引き締めるために緑は大事。何もない空間は綺麗じゃない。
生活感があって初めて空間である
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右下:玄関の正面にある壁。色粉を混ぜた土を突き固めていき、この段差ができる 左下:収納の扉は木目がつながっている。大工の丁寧な仕事が見て取れる
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西尾 直樹
代表取締役・営業設計| 高陽建設株式会社| 香川県高松市生まれ。言葉・変化・未来を読み、住まいの企画から木材の製材、施工、アフターメンテナンスまで一貫して行う







