歳月が培った風合いのある佇まい
技と工夫で手がけた古民家リノベーション
高松市の郊外にあった古民家を購入し、セルフリノベをしている話を聞いたのは、1年以上前だっただろうか。私たちの希望を聞き入れ、本宅に招待してくださったのはシティング代表取締役の小西洋一さん。
「突然、かみさんが古民家に住みたいって言い出してね。ここは敷地も広いし畑もできるし。まあいいかって」と人懐っこい笑顔で話す。
敷地には、藁葺きに金属屋根を被せた築165年の家屋と、現在母屋として使っている築105年になる家屋の二棟が建つ。かつては古い納屋もあったが、そちらは壊したそうだ。
藁葺きの家屋は、通路に面した外壁に木目が美しい板と石を張り、モダンで趣のある外観に仕上げている。内部はあまりいじらず、江戸時代の面影そのままに、剥き出しの土壁が現しとなっている。
「以前住んでいた人は、こちらの母屋ができるまでは、藁葺きの方で住んでいたようです。家を隣に新しく建ててから移り住んだのでしょうね」
床は土を固めた土間のみだったようで、当時はその上にむしろを敷いて生活していた様子がうかがえると小西さんはいう。今は壁や床を補強し、納屋として活用している。
場所を移し、本宅にお邪魔する。こちらも、築100年以上が経過している家屋。
天井板を剥がし、梁を剥き出しにしたので天井が高く、部屋に広がりを感じる。
さらに自社製造の木製サッシをふんだんに使った広い掃き出し窓が、室内に十分な採光をもたらしている。
木の扱いに長けた小西さん。手作りの囲炉裏に、家具や木製キッチン、照明など、家屋のいたるところに木材が活かされている。中でも試しに取り入れたという檜風呂は小西さんのお気に入り。
「今までは、檜風呂ってそんなにええんかなって思ってたんですけど、やってみたら意外とええんです」。
底が平らなので、残った排水をチリトリですくって出すのは小西さんの仕事。それもちっとも苦にならないのだとか。
庭の隅には畑が広がり、様々な自家製野菜が育てられている。
「去年の夏、庭にプールを出したら、孫たちがここで一日中遊んでね」。
と、嬉しそうに目を細める。
日々の実りを家族みんなで楽しみながら、悠々自適な理想の暮らしを手に入れていた。