case 10ー 設計士 / INTERIOR DESIGN GUIDE 2025

中2階の床は、細長い木の板を隙間をあけて平行に並べることで空気の流れを作り、窓からの光を通している
自然光と木材を
存分に味わう
香川県の西側、三豊市に位置する大河内工務店の本社は、同社が運営するカフェ&ギャラリーの「木きん堂」やガーデンが集まる敷地内に建ち、ふらっと立ち寄りたくなる雰囲気が漂う。
「先代の社長は“伝説の棟梁”と呼ばれ、凄腕の大工でした。大工から生まれた工務店なので、木材を生かし、大工の美しい技を表現する場にもなっています」そう話すのは、リノベーションを担当する山本克さん。実際に木を組んでいる様子から、丁寧な仕事が細部まで行き届いているからこそ実現できる構造だと見て取れる。
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POINT! >>> 梁は「継手」という、木材をパズルのように接合する伝統的な技術で作られ、大工職人の技が光る
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お客様や社員同士の打ち合わせスペース。靴を脱ぐ事務所の床は、ヒノキ材を使用。艶が出る塗料はあえて塗らず、木の質感を大切にしている。経年変化で自然と艶が出てきている
約20名の社員のデスクが並ぶ事務スペースの隣には打ち合わせスペースが設けられている。棚の一部に鏡張りを取り入れ、奥にもう一部屋あるかのような奥行きを演出している。打ち合わせテーブルの中には、おむすび型の造作テーブルがある。お客様と会話する際にあえて目線をずらして緊張感を和らげることで、自然と会話が弾みやすくなる仕掛けだ。
事務所の随所には、木の格子ラインがあしらわれている。中2階の床や収納棚、エアコンの目隠し、外観の壁面などに取り入れられ、面の中に線を作ることで、角材が生み出す陰影をデザインとして見せることができる。
「ラインを見せることで空間が引き締まり、美しく見えるんです。アクセントに使うことが多いですね。ホームセンターの木でも再現できると思いますよ」と山本さん。
自然光に包まれた柔らかい空気感の中で、自然の素材を引き立たせた細やかな技術と知識、工夫が積み重ねられ、心地良く過ごせる空間を丁寧に形作っている。

無機質な事務机の上に木の天板を置き、柔らかい雰囲気に統一。社内で使うペン立ても木材を使用するなど、できるだけ木のモノにこだわる

中2階に向かう階段に鬼瓦。瓦もユニークなインテリアになる

線のニュアンスを生かした収納棚

木の格子が特徴的な外観。扉があるとお客様が入りにくいため、一面ガラス張りにしている。2004年の竣工当時は工務店の事務所では珍しいデザインだったそう
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POINT! >>> 自然光を生かしつつ、必要な部分だけにスポットライトを当てる照明の使い方。間接照明で天井を照らすと空間を優しい光で明るくしてくれる
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山本 克
設計士 | 株式会社 大河内工務店 | 香川県三豊市生まれ。創業72年の家づくりの中で磨き続けてきた、技術と専門知識でお客様の理想を形にする