case 09ー 建築家 / INTERIOR DESIGN GUIDE 2025
新・旧の融合で
輝きを増すモノたち
南側に瀬戸内海が見えるマンションの一角が清水設計の拠点だ。10年前にリノベーションを施した空間は、天井を取り払い、剥き出しになった部分を黒く塗り直すことで、部屋全体に統一感が生まれている。打ち合わせテーブルの周囲には代表の清水康弘さんが各地を訪れた際に集めた愛すべきコレクションが所狭しと並ぶ。これらは色調を抑えた統一感のあるアイテム選びにより、乱雑さを感じさせず、むしろ空間を引き締めている。
流れている音も印象的だ。飼っている鈴虫の音色が響き渡り、まるでBGMのようで空間に深みを与えている。視線を上げれば、貝殻を思わせるガラスを幾層にも重ねた照明が目を引く。大ぶりな照明が一つあるだけで、場にラグジュアリーな雰囲気をもたらす。

「岡山県出身だから地形的に南側に海がないと落ち着かないんです。休憩や考え事をする時に庭に来て海を眺めます」と清水さん。手前に見えるのは、お椀状に割れた庵治石を水鉢にしたもの。庵治石の自然のままの形状を活かしている
打ち合わせスペースの先を行くとマングローブ、ガジュマル、バナナなどの南洋植物が生茂る庭につながる。窓はあえてカーテンをつけず、植物の日陰をカーテンがわりにしているのも工夫のひとつ。庭の至るところに石と植物を組み合わせたインテリアが、まるで最初からそこにあったように自然に配置されている。
「石は重たいからみんなが使いたがらない。ここに置いて自分で楽しんでいるんです。山に行ったらこんな雰囲気があるのも不思議ではないね」。
清水さんは「古いモノに力がある」という。破棄するのではなく、時を重ねたモノたちの価値を見つけ、新しいモノと融合させて、インテリアに生まれ変わらせる。年月に磨かれた小物や植物、石などのコレクションが、ここで新たな輝きを放っている。

日本庭園によくある、茶室に入る前に手を清めるために置かれた「つくばい」が植木鉢に様変わり

山で拾った植物をお皿に乗せて可愛くアレンジ。2年前から始めてどんどん成長中

宮城県の伝統工芸品である松笠風鈴を庭のテントに吊るしている。手作りならではのやさしい音色が心地良い

事務所入り口にはリースをかけた照明。植物の陰影でおしゃれなインテリアになっている
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POINT! >>> 猫の小物を集めるのが好きな清水さん。事務所のあちこちにそのコレクションが点在している。好きなものを散りばめておくことで、1つ見つける度に楽しい気分にさせてくれる
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清水 康弘
建築家 | 株式会社 清水設計 | 岡山県倉敷市生まれ。住宅・店鋪・医院・古民家再生、リノベーション、リフォームの設計・監理など幅広く活動。家に調和した植栽や外構まで提案する