case 07ー 建築士 / INTERIOR DESIGN GUIDE 2025

case 07ー 建築士 / INTERIOR DESIGN GUIDE 2025

 

打ち合わせスペースに置かれた机と椅子の高さは、一般的なものより低い。「なぜか重心を下げることで、リラックスできる、長居したくなる空間になるんです。低く座ると天井が高く空間がゆったりと広く感じられるところも良いと思っています」

 

自然素材が導く
不完全な中の美しさ

瀬戸内海の海風を感じられる屋島の麓、のびのびと育つ植物が出迎えてくれる場所に、藤堂建築設計事務所はある。代表の藤堂誠司さんが独立して初めて設計を手掛けたこの事務所は、昔から身近にある素材を組み合わせて作られている。
「僕は民家と茶室が好きなんです。自然で育った素材をそのまま暮らしに使っているのが良い。茶室の侘び寂びを表現する要素の一つでもある竹は、1年で伸びて循環するのが早い素材。材料を決めるときにまず、竹でできるか考えます」という藤堂さん。実際に、事務所内の手すりや窓の格子、照明の支えなどにも竹が使われており、名刺の紙や普段はいているズボンにまで、竹の繊維が入っているというこだわりようだ。

打ち合わせスペースは、木の縦横の交差が目を引くが、圧迫感がなく、柔らかい空気が流れている。インテリアには青や赤などの原色を入れず、木や紙、土など自然素材の色で構成し、柱と梁を目立たせる工夫が見られる。柱は通常より大きめに面取りをすることで、丸みを帯びさせ、陰影が強く出ないように調整。柱や梁の木目も装飾の一つと考え、表情の違いをインテリアとして楽しんでいるそうだ。「木材って言ってみれば一点もの。木目がそれぞれ違ってその個性を並べるのも面白いと思っています」。柱の木目は、藤堂さんが4つの面から厳選し、打ち合わせスペース側に最も美しい面が向くよう配置されている。
ありのままに、コントロールされていない自然素材に丁寧に向き合い、その表情によって生まれる空間を作るのが藤堂さんのスタイル。細かいところまで計算された工夫が、自然と寄り添った空間につながっているのだろう。

 

階段に本を並べて、本棚に。階段に座り、竹の格子から入る光で本を読むのにぴったりの場所

2階の廊下には作業台。疲れたら、斜め上の窓から見える空を眺めて一服。 左側のデスク業務する部屋は障子で緩やかに仕切る。「紙一枚で仕切るとやわらかく感じられるんです」

ごま竹を手すりに。凹凸のある質感なので握りやすい

金属製の取手をつけてしまうと柱や梁より目立ってしまう。襖の持ち手を埋め込んで素材感を統一し、控えめに

約40〜50種類の植物が育つ庭。食べることは暮らしにつながるので、食べられる植物が多め。日の当たり具合を見て植える場所を変えている

 

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POINT! >>> 打ち合わせスペースの椅子はIKEAのもの。あえて座を低くするために、のこぎりで4足をカットした

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★ 藤堂建築設計事務所について、詳しくはこちらから

・ 藤堂建築設計事務所 HP

・アキリノ住まいの電話帳

・当記事は「アキリノstories17」(2025年7月発行)に掲載しています

case 07ー 建築士 / INTERIOR DESIGN GUIDE 2025

藤堂 誠司

建築士 | 藤堂建築設計事務所 |香川県高松市生まれ。自然との関わりを考え、エクステリアからインテリアまでを含めた建築を提案する

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